茂木誠・鈴木悠介先生の世界史アクティブ・ラーニング公開授業に参加してきました(1)

 皇居の隣というリッチで資本主義な香りがするビルで駿台予備学校の茂木誠先生が主催された「世界史アクティブ・ラーニング公開授業」に参加してきました。学びエイドの鈴木悠介先生も模擬授業をしてくださり大変贅沢な時間でした。参加者も高校生から教員まで多様でした。九州から飛行機でこの授業を受けにやってきた高校一年生がいてバイタリティに圧倒されました。(笑)高校生と教員が同じアクティブ・ラーニング型授業で討論する光景は、滅多に見れないです。

 鈴木先生・茂木先生それぞれ100分の公開授業でした。参加者が実際に授業を受けるというのもユニークですね。

 

最初は、鈴木先生が、十字軍を題材に通説を疑う授業を展開していただきました。

 

基本的な流れ

①ペア学習で前時の確認 (20分)

②課題の提示

③個人活動 (5分)…個別に課題を解く

④ペア学習(15分)…個別課題で解いた課題を3分割し、グループをA・B・Cに分かれてそれぞれをペアで検討

⑤ グループ学習(15分)…各グループ(6人)で課題のまとめを作る

⑥ディスカッション(15分)…全体で検討

⑦振り返り

 

  という流れでした。前時の確認に20分かけてますが、こういう場では仕方がありません。考察するための基本的な知識を確認しておかなければ。実際に授業する場合は、もっと短くてもいいはずです。

   

   その後の流れを見れば分かるように知識構成型ジグソー法を意識された模擬授業でした。参考文献に永松靖典『歴史的思考力を育てる 歴史学習のアクティブ・ラーニング』があるので本書から形式は参考にされたのでしょう。知識構成型ジグソー法に興味がある方はご一読ください。AL型の授業として洗練されていて誰にでも使いやすい教授法です。

 

  知識構成型ジグソーでいうエキスパート資料は、十字軍研究者による通説批判が箇条書きで示されたものです。たとえば、「クレルモン宗教会議において、イェルサレムの回復がどの程度の重要性を持っていたかは、研究者の間でも意見が分かれている」などの通説批判が8点あげられました。これを参考に、2018年京都大学の十字軍の論述問題の解答例の通説として、書き換えていくものでした。鈴木先生もおっしゃっていましたが、課題の難易度は高いです。想定も中上位層です。授業目的が、「通説を再考する」なので難易度も高くなるのは仕方がないでしょう。

 

 

  私は、知識構成型ジグソー法を何度か実践していますが、自分がしっかり受けるのは初めての経験でした。ペア学習で「ここがよくわからないんですよね」「これどういう意味?」と相互に言い合いながら、仮説を互いにつぶやく。それを修正しながら課題に取り組む。不思議としだいに資料を広い視点から考えるようになるんですね。最初は、エキスパート資料だけを検討していたんですが、しだいに①で確認した十字軍の通史も参照してました。多くの要素を同時に考慮しつつ思考しているような感覚があり、楽しかったです。

 グループ学習では、別の資料を考察していた人たちと一つの解答を作り上げていくわけですが、1グループ6人は多かったです。6人の考えをまとめるのは、大変です。グループワークは、3・4人がちょうどいいですね。

 

 

さて、 鈴木先生は、「通説を再考させる」ことを本時の目的に設定されていました。その目的から本授業を考えると、ディスカッションでどのグループも通説の問題点を的確に理解していたので、目的は達成していたと考えてよかったと思います。

    その後の質疑でフロアから「通説を批判させると教科書を信用しなくなるのではないか」という質問が出ました。「教科書ってダメなんだー」と思わせる授業は、問題がありますから当然の質問です。鈴木先生は、今回の授業後に追加の課題を考えていました。教科書を丁寧に読み、研究者らの通説批判の観点がすでに教科書に取り入れられているのを確認する課題です。この終わり方は、素晴らしいものだと思います。私もトゥール・ポワティエ間の戦いで教科書の記述批判をする課題を作ったことがありますが、教科書の信用を落とすだけではということで実践を見送りました。鈴木先生の提案は、この問題を回避し、生徒が、一言一句、敏感に読解する力がつきそうですよね。

   これを参考に教材をさっそく作ってみたいです。

 

茂木先生の授業の感想は、また後日。

鈴木先生、ありがとうございました。