サザエさんを世界史の資料問題にしてみた

新聞で作問化したい記事があったので作ってみました。

 

この4コマ漫画は、朝日新聞で連載されていた「サザエさん」である。下の漫画の内容として正しいものを記号で答えよ

 

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(ア)この漫画は、掲載5日前に起こったホーチミンによるクーデタを念頭に書かれた。彼は、ジョンソン政権の援助の下にクーデタを成功させた

(イ)この漫画は、掲載5日前に起こった南ベトナム解放民族戦線によるテト攻勢を念頭に書かれた。この結果、ニクソン政権は、ベトナムからの撤退を決めた

(ウ)この漫画は、掲載5日前に起こったバオ=ダイの即位を念頭に書かれた。この結果、アメリカの支援を受けたジエム政権が成立した

(エ)この漫画は、掲載5日前に起こった反ジエムの軍部によるクーデタを念頭に書かれた。このクーデタをケネディ政権は認めた

 

  この問題を解くためには、「出典」の年代を確認して、各選択肢の正誤を検討するという過程をとります。が、ダメ問題ですね。作問して分かりましたが、わざわざ漫画を提示した理由が見えませんね。「出典への意識」を問いたい場合には使えるかもしれませんが、もっと資料を活用した問題にしたい。知識レベルも高めなのでレベルも抑えて新しく作問。

 

 

下の4コマ漫画は、朝日新聞で連載されていた「サザエさん」である。下の漫画の内容として正しいものを記号で答えよ

 

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(ア)この漫画は、掲載5日前におきた反ジエムの軍部のクーデタを念頭に書かれた。ケネディ政権がジエムを支持したためクーデタは失敗した

(イ)この漫画は、掲載5日前におきた反ジエムの軍部のクーデタを念頭に書かれた。ケネディ政権がクーデタを支持したためジエム政権は崩壊した

(ウ)この漫画は、掲載5日前におきた反ジエムの軍部のクーデタを念頭に書かれた。ニクソン政権がジエムを支持したためクーデタは失敗した

(エ)この漫画は、掲載5日前におきた反ジエムの軍部のクーデタを念頭に書かれた。ニクソン政権がクーデタを支持したためジエム政権は崩壊した

 

 

生徒の解答過程は、2つの経路が考えられます。

 

 (1)生徒がジエムの知識を習得している場合  

 (2)生徒がジエムの知識を習得していない場合

 

 

(1)の場合は、シンプルです。選択肢を検討するだけで解くことができます。史実としては、1つしかないので、まったく資料をみなくても解くことができます。この場合は、ただ簡単な問題です。

 

(2)の場合は、資料の読解を必要とし次のような過程を経ると考えられます。 

「夫が妻にクーデタを行ったが、妻は冷静に対処してクーデタは失敗した」と漫画のストーリーを理解する

  ↓

妻の「南ベトナムのようにゃいかないのよ」というセリフから、漫画の念頭に置かれたクーデタは、成功したと理解する。選択肢(ア)・(ウ)は、誤りと判断。

 ↓

出典で1963年を確認。冷戦史の基本であるアメリカ大統領の年代把握です。1963年の大統領がケネディニクソンかを判断します。ベトナム戦争が本格化したジョンソン政権の北爆の1965年です。基本事項です。その前だと分かるので答えは(イ)

 

この経路を取った場合、必要な知識は、ケネディの在位期間だけです。

(1)の経路を取れない生徒が多い場合には、この問題は、資料読解と知識を活用したものになります。私としては、センター試験ぐらいのレベルで作れたのかなと思っています。今回の作問では、出典の年代を明示する方向で考えました。漫画・風刺画が書かれた年代を問う問題もありえますが、南ベトナムは、他のクーデタもたくさんあって作りにくかったです。他にこんな風に出題できるのではないかということがありましたら、是非とも教えていただきたいです。

  新テストでは、この方向性の問題が出題されると思うので、出題スキルを高めていきたいです。

 

吉川幸男「歴史授業のための「問い」の設定をめぐる視点の構造一教材研究から発問構成までの教 師の仕事を手がかりに一」で教員の教材研究過程が公開されることは少ないとあったので、作問しながら書いてみました。

 

引用文献

小北清人サザエさんをさがして」『朝日新聞Be』2019年3月16日朝刊